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自分の地図をつくろう

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30億年を描く。大事件ほどささやかに。リチャード・マグワイア『ヒア』

本の話

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トークイベントのようす

 

リチャード・マグワイアさんのビジュアルブック、

『HERE』が青山ブックセンターで先行発売され、

それに合わせたトークイベントがあったので行って来ました。

 

 

これ傑作です。

知性と感傷が共存した、洒脱で

ものすごいカッコいい、

わかりやすくて深い、

「時間」を感じることができる、

そんなコミックアートブックです。

 

この本は、作者のリチャード・マグアイアさんが

かつて住んでいたニュージャージーの自宅(ニューヨーク近郊)を

舞台にしています。

 

「窓と作りつけの暖炉のほかには何もない部屋、

左上には2014年という数字。

ページをめくると、1957・1942・2007……と

様々な年代の同じ空間が現れ、

さらに異なった年代の断片が共存・混在していく。

そして紀元前30億50万年から22175年まで、

ある家族の記憶の数々が地球の歴史と一体となって

圧倒的なビジュアルで奏でられていく――

リチャード・マグワイア『ヒア』はある部屋の一角の物語であり、

地球の黎明期から遥かな未来まで、

この空間で起こる無数の出来事の物語である」

www.kokusho.co.jp

 

説明だけ読んでもわからないかもしれない。

なので、中身をちょっと見てみましょう。

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こうやって、リビングルームに定点カメラを置いたようなかんじ。

この部屋は1996年時点のリビングルームだけど、

部屋の中にウインドウを設けて、その中に

1978年や、2016年に出現しては消えていった人の動きを、

イラストレーションで表現しています。

 

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このアパートが建つ前のこの場所についてもこの本は、ふんだんに言及しています。

例えばこんなふうに。

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実際にマグワイアさんのアパートの近所には、

アメリカ建国の父・ベンジャミン・フランクリンの息子が住んでいて、

これは、どうやらアパートの存在していた場所には

息子さんの家に至る小道があったと推測して描いたものだと思います。

右側のウインドウには、

やはり別の時代にこの場所にいたインディアンのイラストレーション。

そして、彼らはデッドラング(使う人がいなくなった言語)を話しています。

 

 

未来にも飛びます。

リビングルームのあったエリアはもう、何もない場所になっていて、

ツアーガイドが、過去についての説明をしているシーンです。

でもかつてここは、マグワイアさんのリビングルームで、

クリスマスツリーが置いてあった場所。

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この本をつくるにあたってマグワイアさんはこのエリアについての調査を

かなり綿密にしたそうなのですが、

「やっぱり、描くうえで難しいのは未来についてのことだね」

と言っていました。

「福島の原発事故にインスパイアされて、

ある未来の時点で、ここでも原発事故(近くに原発がある)が

起こる設定にして描いたシーンもある。

でも、災禍や世界の終わりみたいな

大事件ほど、

小さくささやかに描くことを心がけていた。

テレビの中で世界の終わりが伝えられている、みたいな。

その代わり、

コップがテーブルから落ちて割れるみたいな

生活の小さな出来事ほど大きく描いた」

とマグワイアさんは言ってました。

 

人は80年生きると仮定すると、

マグワイアさんが描いた30億年あまりの時間のなかで、

私達がこの世に存在するのはほんの一瞬、というか。

ほぼ存在しない。

存在しないことの「誤差」として、

たまたま私たちは存在している。

ほぼゼロにちかい、1だ。

そういう、「誤差」の範囲のなかで

私たちは生きている。

 

でも、「誤差」を生きる中で、こうやって、

大きな時間を想像することができるんだな、と、

マグワイアさんの才能と、

人間の想像力は時間を超えていることに

とても感激した。

 

よく片付いたリビングルームでコーヒーを飲みながら、

この本を開いたら、

世界の終わりを想像しながら、

優しい時間が過ごせるだろうなと

思います。

 

リチャード・マグワイアさんは

今では「ニューヨーカー」誌の

カバーやグラフィック・デザイナーとして知られていますが、

バンド「リキッド・リキッド」のベーシストでもあります。

ちょうかっこいい「キャバーン」MV

www.youtube.com

 

目が疲れた夜の読書に最適! 名作を耳で楽しめるオーディオブック

 

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