自分を好きになろう

人生で味わったうれしさも悔しさもフル活用して、新しいことにチャレンジしよう

全文公開『自分を好きになろう』第一章『ゴミ屋敷を片付ける』中編

 6月15日に発売になる新著『自分を好きになろう』の第一章を三回に分けて発売に先駆けてブログで全文公開します。今回は第二回。

第一回目はこちらから読めます。

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元気な人がしていそうなことを書いてみた

病気の人がやりそうなことって、どんなことだろう?

 

これまで、そんなことを考えたことがありませんでした。

ふと、思い出したのが、小学1年生の時の学芸会の劇でした。「白雪姫」をクラスのみんなで演じました。

私の親友の陽子ちゃんが、毒りんごを持った魔女のおばあさん役でした。

ところが陽子ちゃんは一生懸命に覚えたセリフを話すのですが、何か今ひとつしっくりこないのです。なんとなく、みんなも違和感を感じていました。陽子ちゃんも困った様子です。

陽子ちゃんの芝居を見た先生が、私たちにこう言いました。

「陽子ちゃんの役の魔女は、おばあさんだよね。みんなが考えるおばあさんって、どんなふうかな? みんな、おばあさんや、おじいさんって、どんな姿勢をしている? みんなでやってみよう、せーの」

先生の言葉を合図に、クラスのみんなは一斉に背を丸めたのです。

先生はこう言いました。

 

「そうだよね。おばあさんやおじいさんは、背が丸まっているよね。じゃあ、威張っている人はどうかな? ふんぞり返っているよね。そして口がへの字で、怖い顔だよね。みんな、自分の演じる役の人ってどんな人か、考えてみましょう。えらそうかな? 優しそうかな? 元気かな? それとも病気かな? そういう人たちって、どんな表情や、格好をしているかな? それを自分で考えて、真似をする気持ちでやってみようね」

 

あいにく、その時に私のやった役を自分で忘れてしまったのですが、「魔女はおばあさんで、怖そうで、いじわる」だと役を分析した陽子ちゃんは、背を曲げて、口をへの字にし、眉間にしわを寄せて低い声で話しはじめたのです。

するといきなり魔女っぽくなったのです。この様子は私にとっては強烈な印象になって残りました。

 

「病気の人みたいなことを全部やってるだろ」という親方の言葉から、この時の記憶がよみがえりました。

 

「そうか、私は、親方から見たら、病気の人を演じている状態ってことなのか。私が元気だって主張しても親方には病気に見えるってそういうことだろうなあ」

 

じゃあ逆に、元気な人って、どんな人だろう。

手元にあったペンと紙に、何気なく書いてみました。

 

そういえば、最近笑ってないな

 

「私が考える元気な人」

・まず、いつも笑顔で明るい雰囲気の人。

・肌ツヤがよく、ちゃんとお化粧をしている人。

・きちんとしたオシャレをしている人。

・いつも考えが前向きな人。

・人の幸せを喜べる人。

・お風呂にちゃんと入って、清潔感を保っている人。

・ひとりを楽しみ、自分のために部屋を片付けたり料理をして快適に過ごしている人。

 

書き終わった紙をじーっと眺めて、自分でびっくりしました。

「元気な人リストに、今の私は何ひとつ、当てはまってない」ということに気がついたからです。

 

まず、たぶん、2ヶ月ぐらい笑っていません。

好きな人がいなくなってから、表情が消えました。

オシャレや化粧どころか、1週間ぐらいお風呂にすら入っていません。

 

考え方は前向きではないことは確かです。……というか、考え方って今さら変えられるの? もう、この歳なんだから無理じゃない?

そして部屋も……。

そうか、私、元気な人ではないんだな。自分でも薄々わかっていたのですが、親方からの電話で、自分をはじめて客観視できました。

 

「やっぱ、掃除っていいのかな」

「元気な人リストの中で、できそうなのって、とりあえず掃除ぐらいだよな、今の私からしたら」

「じゃあ、できるところからやるか……」

 

彼が去る前、彼を部屋に招くために私はたいてい、1回8000円の料金を払ってお掃除をしてくれるサービスを利用していました。

これまで、掃除の習慣がなかったのです。

子供の時も、掃除をした記憶はありません。母親や姉がやってくれていたのだと思います。

いや、思い出しました。中学3年生で、私が激しい反抗期に入った時、部屋の入り口のガラス扉を叩き割ったことがあるのですが、その破片を私は半年以上片付けなかったことを。破片と紙と本が床に散乱する部屋で寝起きして、私は中学を卒業しました。

 

そして、結婚をしていた時は、夫が掃除をしてくれていましたし、仕事に復帰したあとは、掃除サービスに掃除を頼んできました。

 

だから、正直言って、掃除のやり方が全然わかりませんでした。

自分がまともに掃除ができないくせに一丁前なことを言いますが、掃除サービスに頼んでみて思ったのは、「なんか今ひとつだな」ということなのです。確かに部屋の清掃はしてくれるので、床からはねこの毛がなくなり、棚やテーブルのホコリは拭き取られてキレイになっています。

でも、なんだか片付いた感じがしないのです。

なんでなんだろう?

 

掃除の方法を知らないし、いろいろ読んでみようかなと考え、私は掃除の本をネット書店でダウンロードして読みはじめました。

書籍を買う前に、ネットのまとめサイトも利用しました。確かに簡単に検索できるし、情報もタダなのですが、どうにも情報が薄く、なんとなく不毛な気持ちになりました。何時間もネットサーフィンをして掃除の方法を調べるよりも、本を買ったほうが、素早く体系的に知識が得られると思って、掃除の本を買うことにしました。1冊だけだと自分に合わないかもしれないので、何冊か読みました。掃除はやったほうがいいのは間違いないので、本が合わないからという理由で掃除が嫌いなままでいるのは損だと考えたからです。「おなじテーマの本は1冊だけではなく何冊か読む」というのは、何かの知識や習慣を身につける時にとても重要だとこの時実感しました。

 

現実を受け入れて、自分の部屋が「汚部屋」であると自覚をするのは、ちょっとつらいことでしたが、でもこれが現実なのだからしかたありません。

 

まずは1ヶ所10秒片付けをやってみた

 

いろいろな本を読んでみて、汚部屋から脱出した人の体験談で共通している点を見つけました。それは「まずは気になる1ヶ所だけキレイにした」ということからはじめたという点です。

いきなり全部やるとなると、途方に暮れて挫折するのは、ダイエットと似ています。10キロを短期間で痩せるとなると「無理だな」と思ってしまいますが、まずは1キロ痩せて、あとは徐々に1年ぐらいかけて痩せていこう、と気長に構えることができたら、少しだけやる気が出てきます。掃除の習慣は一生ものなので、テスト勉強みたいに短期間に結着をつけることを考えるのはよそうと思いました。

 

ゴミ屋敷のベッドの中で、掃除と片付けの本を10冊ほど読んで、ようやく、やる気が出てきました。

そして、ベッドサイドに積まれていたペットボトルをゴミ袋にまとめて入れてみました。

 

時間にして10秒ほどのその行為が、私にとっての「片付け」デビューでした。

ペットボトルがなくなった場所は、床が出現しました。

なんとなくそこだけ、普通の人の部屋のような雰囲気になったのです。

 

「これは」

床に積まれたゴミは、あまりに量があったため、もう永遠に自分の力ではどうにもできないとなぜか思い込んでいたのですが、手を動かすと10秒ほどで簡単にキレイになってしまいました。この事実に何かハッとして、私はとっさに反対側に積んであった惣菜弁当のカラも、別のゴミ袋に詰めました。そこにまた、床が出現しました。

 

ゴミを、マンションのゴミステーションに持っていき、部屋に戻ると、床が見えている寝室のベッドの周りは、埃っぽいけれどなんとなく健全な部屋に見えたのです。

すると、居間や廊下にあふれている、服や本の山、そしてなんだかわからないチラシや紙のゴミ、そしてねこの毛玉などが急に目に入ってきたのです。

 

「ひどい部屋に住んでたんだな」

 

1ヶ所をキレイにすると、部屋の他の場所の「汚さ」がはっきりと目に入ってくるという体験をこの時にしました。

そして、今目に入っているものの中で、明らかなゴミと言えるものを、すぐに袋に詰めて、ゴミステーションに持っていきました。はるか遠くに感じてめったに行かなかったゴミステーションも、エレベーターに乗ってしまえばすぐにたどりつけました。しかも24時間ゴミ捨て放題なのです。おなじマンションに12年住んでいて、このことに感謝したのはこの日がはじめてでした。

 

そして部屋に戻って窓を開けました。

換気をしたのは、実に2ヶ月ぶりです。

 

部屋の淀んだ空気と一緒にどんよりした気分も抜けていくような気持ちよさを感じました。私はこの2ヶ月ほど、部屋の換気すらできなかったことに改めて驚きました。

 

ものの捨て方がわからない

 

これでゴミはなくなったし、換気もした。今度は掃除機をかけて、拭き掃除をすれば、部屋はキレイになるのだろうか。

 

いや……、そうは思えない。

 

まだ部屋の中が雑然としている。「今はゴミがない部屋」であって「片付いた部屋」ではない。でも、この乱雑な感じの部屋をどうしたらホテルのようなすっきりした空間になるのか、わかりませんでした。私はまた書物に知恵を借りることにしました。

 

さらに、片付けの本を読んでみて気がついたのは、うちにはものが多すぎるということでした。掃除サービスは、清掃はしてくれるけど、ものを捨ててはくれないのです。なぜなら、捨てる判断ができるのは持ち主だけだからです。

以前、プロに清掃をお願いした時に「なんか今ひとつ」だなと思っていたのはこれが理由だったのです。

「掃除」の前には「ものを捨てないといけない」ということを知りました。まず捨てないと、片付いてキレイな部屋にはならないのです。

 

私の家は、収納の能力をはるかに超えて、家にものがありました。服や本があふれていました。片付け心に火がついた私は思いました、「一刻も早く、これを捨てたい」と。

しかし、捨てたいと思うものの多くは、掃除や片付けの能力が全くない自分には、手に負えなかったのです。「これが、燃えるゴミなのか、燃えないゴミなのか、資源ゴミなのか、粗大ゴミなのか、わからない」、恥ずかしいですがそんな状態でした。

 

(続く・第一章第二回目は来週月曜日に公開します)

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