日本が中国人の「マルタ」で人体実験を行っていた施設
中国の黒龍江省の省都・ハルビン郊外にある731部隊の跡地に行ってきました。
入場無料です。
2014年に中国が大規模なアーカイブ施設を作っているので、見応えがありました。
ざっと走り書きですが感想を置いておきます。
ドイツは侵略者側であり敗戦国だけど歴史アーカイブをちゃんとしている。町のどこにいっても、ここに何があった、とか、どんなことが行われた、とか、何の跡地であるとか、プレートが打ってある。中国は前の戦争では侵略された側で、経済的に豊かになってきた今、かなり大規模な歴史アーカイブ施設を全国に作っている。日本で言うところのバブル景気頃に大流行した、市町村史の編纂ブームみたいなものだろうか。しかし規模が違いすぎる。
ドイツが先進国であり文化的にも進歩的な国だというのは誰も疑わないだろう。中国に関しても異論はあっても、これからGDP1位になる先進国になるだろう。
そういうときに、歴史アーカイブが持つ意味ってなんだろうかっておもう。単に同族意識とか愛国心とかではなく、ここで何があったのか、自分たちはどういう人達なのかをわかる必要をいずれ生きていると感じる時が来るはずだ。
同行したIくんが教えてくれたけど、中国は古来よりずーっと国史を書き継いでおり、いまは清国の歴史を記録中。
日本は国史を作っていたが遣唐使をやめて国風文化になったあたりから国史を書くのをやめてしまったそうだ。
日本は東京の空襲についての資料館すらない。
広島の原爆資料館は一応あるけど、見世物小屋みたいなノリで作ってるので知性的ではないと思った。
731部隊罪証陳列館は、石井四郎が提供した圧倒的な量のドキュメントが保存されており、これを時系列順に並べるだけでぐうの音もでないぐらいの圧倒的な施設になっていた。
南京も、アウシュビッツも見たが(他の施設もいろいろ見ているが、例として2つ名前を出した)、証言はあれど証拠が弱いところがあるので、そこはどうしても知性が必要になると思う。政治的アジテーションに流されない、見世物にならないための、歴史の施設を創るのは案外難しい。
731部隊を率いた石井四郎の得体の知れなさ
ちなみに731部隊をつくった石井四郎に抱いた感想。
やたら政治力のある頭がおかしい人、という印象だった。
ものすごい研究費引っ張ってきて、たいして実戦的成果を上げてなくて、人体実験しまくって、戦後は資料全部アメリカに提供して部隊の人たち全員を免責させた石井四郎。やってることはマジでえげつない。中国からしたら完全にやり逃げされたも同然なので、怒りを覚えるのは当然だろう、そう思わざるを得ない、石井四郎の所業が整然と陳列されていた。
考えこんでしまった。ナイフを創る人なら絶対に切りたくなる。拳銃が好きで集めている人なら撃ちたくなる。この人の場合は、人で実験したい。それだけが動機だったんじゃないかと思ってしまう。従事者300人も殉職させているが、資料を焼かずに持ち帰って取引材料として米国に渡すのは、おそらく日本国からも迷惑だろう。どこの立場にも立っていない人という感じがした。
南京でも、アウシュビッツでも、ここまで交渉力があるトップはいなかったってことだから、ある意味すごいと思う石井四郎。あと、戦後はほとんど社会的に死んでるので、本人も死後の世界を生きてるような気持ちでいたんだろうなと思います。
ちなみに石井四郎は、別に戦犯逃れをしたかったわけじゃないんじゃないかと思う。10年間の研究成果を守りたかった動機の方が強かったんじゃないか。日本に忠誠を誓うなら、ボイラー室を爆破した時点ですべてのカルテも燃やすはずだから。部隊員全員を免責させたのは同士愛ゆえではないように思った。
女性隊員だった郡司陽子さん。彼女の証言が本になってますが、相当なことをやってます。
復刊してほしい。